川は生きている

1年から1年半に一度、どういうわけかこの手の本を読みたくなる。不思議なことになんとなく引きつけられるようにその本に出会う。今回もそうだった。


先日、叔母の葬儀で山口に出かけるときに、新幹線の改札を入ったすぐ横のカフェの書棚でこの本を見つけた。パラパラとめくって・・・買った。片道4時間半の車中で209ページの本を読み終えた。


本書は4章で構成されている。第1章は、川の生態系の話し、2章が石狩川治水の話し、第3章が川の再生、第4章が広島の太田川の話しである。


川の生態系には驚かされた。アユが遡上する川が必ずしも良い川であるとはいえない、蛍が生息する川が必ずしも清冽な川というわけではない・・・等、自分が持っていた常識?を覆すような話しに溢れていた。生態系はほんとうに微妙である。極端にいえば、川底の石ころの形が変わるだけで、生態系が変わってしまうほどである。ほんとうにデリケートだ。


石狩川の話しは、札幌農学校出身の河川工学者が、治水のコンセプトを作り、実施し今の石狩川の楚を築いたという話し。先人の偉大さに感銘を受けた。


第3章には川の再生前後の写真が載せられ、どのように変わったかを解説してあった。その変化に驚かされた。都内を流れている善福寺川にも再生区間があるそうだ。一度見てみたいと思った。


ところで、昨年から神田川を走破したいと思っていたが、これを読んでその思いがますます強まった。ちなみに、善福寺川は杉並区の善福寺池に端を発し、中野の和田廣橋付近で神田川に合流し神田川となる。(神田川井の頭池から。)


新幹線広島駅を過ぎると、すぐ太田川本流と太田川放水路を渡る。なるほどぉ・・・と思いながら車窓から太田川を眺めた。小さい頃、広島に住んでいたことがあり、太田川には何度か行った記憶がある。橋桁の周りにハゼが泳いでいたのを思い出す。


森の本、森と海の本、そして今回は川。どうしてこういう本が読みたくなるのだろう?何か、生きている感じ、連鎖する感じ、偉大な感じ、そんな感じに引きつけられるのだろうか?


きっと何かがあるのだろうが、分析はせずに今はそのままにしておこう。


ウェッジ新書というJR東日本の本なので、おそらく普通の書店で見かけることはほとんどないと思う。不思議な縁で手にした本書、いい本に巡り合ったものである。