家族の描き方

11月12日、13日にミネソタ大学のサニー・ハンセン先生が来日し、講演会とワークショップを開催する。


その準備のため、先生の著書"Integrative Life Planning (ILP)"を読み始めたところ、はまってしまった。特に、ジェンダーの話しがおもしろい・・・というかこの年にして、ちょっとしたカルチャーショック、目からウロコ状態になってしまった(笑。)


昨年、平木典子先生の「家族療法」や「システムズ・アプローチ」の講義を受け、システムとして捉えた家族に大きな関心を持っていた。もちろん自分のことも。


NHKの朝ドラは「おひさま」だ。戦前、戦中、戦後昭和の時代を生き抜いた女性とその家族の話しだ。今は、終戦直後、昭和21〜23年ころの長野松本での家族の場面である。舅、姑、夫、赤ん坊と主人公の女性の5人家族だ。


松下奈緒さんが出ている向田邦子ドラマ「胡桃の部屋」を見ている。1980年(昭和55年)前後の日本社会、日本の家族が出てくる。父、母、3人姉妹、弟の6人家族。主人公は次女だ。


父がリストラで家出し(この頃リストラなんてあったっけ???)、今風にいえばホームレスになった。その後、あるおでん屋の女性宅に転がり込んだ。母はショックでうつ病摂食障害、双極性気分障害を発症。長女のだんなが浮気。三女は見栄を張ったばかりにウソがばれて破局。弟は大学に嫌気がさしてバイト。主人公は、父の元部下に恋したが、別居していたその男性の妻が、よりを戻そうとして帰ってきた。それぞれが葛藤し、対立し、諍い、打ちのめされ、抑圧し、爆発するけど、家族は崩壊しない。すごい状況だ!最終回、どうなるんだろう???


ただまぁ、状況はすごくてドラマとしてはおもしろいのだが、そこに登場する男女を見ていると・・・「あぁ、昭和の臭いがするなぁ・・・自分が育った時代の家族は大なり小なりこんな感じだったんだぁ・・・つまり男社会だなぁ・・・女は男に翻弄されたり、逆にそうされまいとして怒ったり抵抗したりがんばったりするけど・・・結局男社会を維持しているんじゃないか・・・男もバカだよなぁ・・・抑圧して・・・自分で自分をぼろぼろにして、初めて人のこころに触れ涙を流し感情表現する・・・何となくわかるなぁ・・・」同じコンテクスト中で男も女ももがいている。サニー・ハンセンのおかげで、こんなことが見えてくる(笑。)


で、おひさま家族。エッ、なんなのだこれは(驚!)この家族、もしかしてジェンダーフリー?みんなやさしくて信頼し合っているし、家族を維持するための役割をわきまえ、役割シェアし、そのときできることをできる人がやっている、つまり交代しながらやっている。


例えば、主人公の女性が、旦那に蕎麦を打たせたいがために、わたしが働いて家計を支えると発言する。子育ては、主人公と夫でシェア。近所の人、主人公の源家族とその近隣、主人公の友人たちが、それぞれのその人らしさを認め合い尊重する。彼らがコミュニティーを作って協力し合う。


エッ、これがダイバーシティー/インクルージョンでなくてなんなのだ!?終戦直後にこんなのあり?主人公の女性もその夫も家族も、サニー・ハンセンの統合的ライフプランニング的に生きている!もちろん、日本文化を反映させているが・・・


この二つのドラマを見て思った。向田邦子は、そのときのある意味典型的な昭和の「家族」をそのまま描いた。かなりデフォルメしているけれども。すごく、しっくりくる。おひさま家族の描かれ方には、平成の今の社会規範(norm)が絶対に反映されていると思う。戦後‐今よりおそらくもっと男社会だっただろう・・・‐にあんな家族、ちょっと信じられない。ドラマとしてはおもしろいけど(笑。)


社会が変わると、家族の描き方もずいぶん変わるものだなぁ・・・と二つのドラマを見ながら思った。サニー・ハンセンの講演会とワークショップが楽しみである。